ビールの作り方④

~フィルターから瓶詰めまで~

さて、完成したビールをいよいよ缶や樽、瓶に詰めて皆さんの元へ届けます。
ビールを汚染する菌が混入するとビールが酸っぱくなったり変な味がするのですが、そのビール汚染の8割はこの缶などに詰める際に起きます。ですので缶詰め、樽詰め、瓶詰めの際はビールが通る管を徹底的に洗浄します。
では見ていきましょう!

完成したビールの酵母やその他の雑菌などを除去し、賞味期限を長くします。
が、この除去の際に一緒にビタミンやミネラル、コクなども同時に失われていくんですね。
無濾過ビールは新鮮な証!!

貯蔵タンクで完成したビールにはまだまだ多くの酵母が残っています。
酵母が残っているビールの利点!
1.コクがあり、味が柔らかくふくよかになる!
2.とにかく美味しい!!

酵母が残っている欠点!
1.劣化しやすくなる(味がおかしくなりやすい)
2.賞味期限が短くなる。
3.味が安定しない。
4.輸送の際に冷蔵輸送しないと味が悪くなる。

などがあります。これは酵母を取り除いた方がよさそうですね。
しかし!酵母を除去しないビールは美味しいんです。酵母が入っているビールは『無濾過(むろか)ビール』などと呼ばれ、新鮮な証拠。ビールもお魚と同様に鮮度が大切なんです。
出来立てのビールは格別の美味しさ….
皆さん、大人になればぜひ工場見学へ行き、出来立てビールを飲んでみてくださいね。。。おっと、脱線しました。ではフィルターを通して酵母やその他の雑菌除去する方法見ていきましょう。

これがフィルター機。骨組みに厚い布のようなものを被せ、そこにフィルター補助剤などを入れて酵母など小さい物質を除去していく。
このような骨組みに厚い布を被せたものが何重にも重なっています。

このフィルターにビールを通していきますが、厚い布に通すだけでは酵母など小さい物質は除去できません。
そこで補助剤として珪藻土(けいそうど:海底などに堆積した藻などの海藻を約1000℃にまで熱して作られる。
1円玉と同じたった1gで20m²(=約11畳分!!)もの面積を持つ、とても細かい粒子)などを入れ、酵母など小さい物質を吸着して布の壁に張り付かせていき、酵母を除去していきます。

これが布の壁にはりつく珪藻土に付着した酵母たち。酵母など小さい物質を除去するため、完成したビールは濁りがなく、キレイな色をしています。
ろ過前のビール。濁っていますね。酵母が入ってる証拠です。そして無濾過のビールは美味しい!!
ろ過後のビールは透明できれいな色をしています。こちらのビールももちろん美味しい!!

このようにろ過されたビールがスーパーで売られているビールですね。では、このフィルターの洗浄についても見ていきましょう。

ビール内の酵母やミネラルとフィルター補助剤(珪藻土など)が厚い布に付着した泥状のものを取り除く様子。この泥状のものは特別なゴミとして捨てられます。
フィルター内の水洗浄の様子。一面、ビールの泡だらけでビールのプールにいるような感覚になります。この後、熱湯でも同様に洗浄して殺菌します。

こうしてフィルターを通して無菌化されたビールはいよいよ瓶や缶に詰められます。
では、瓶詰めの工程を見ていきましょう。

瓶の洗浄機の構造。瓶を回収して洗浄し、再利用します。アルカリ性の洗浄液(NaOH:水酸化ナトリウム)を温めて洗浄・殺菌していきます。
アルカリ性なのでその濃度やpH(酸性かアルカリ性かを測る指標。リトマス試験紙を数値に表して判断しやすくしたもの)と温度が書かれています。

このようにアルカリ性の温水に漬けて(合計20分ほど)洗浄殺菌しラベルをはがしてきれいにしていきます。
ラベルもバラバラになると洗浄機を詰まらせてしまうので一枚の紙として留まる工夫がされています。
また、このラベルに使用する糊もアルカリ性の液ではがれやすいものを使用します。主成分はデンプン(イメージとしてはお餅)

洗浄された瓶はきちんと洗浄されているか、異物や汚れがないかを機械でチェックした後、瓶詰めされていきます。
この検査機の構造もとてもおもしろいのですが、それはまたの機会に。

では、いよいよ瓶詰め工程にいきましょう。

瓶詰め機の構造。黄色は二酸化炭素。
茶色がビール。

酸素はビールの大敵。いかに酸素に触れないまま瓶に詰めるかが重要です。酸素に触れて瓶詰めされると雑菌が繁殖しやすくなり、味が悪くなったり美味しく飲める期間(賞味期限)が短くなります。

瓶詰め機を上から見た構造。左下から右に空瓶が入ってきてビールが詰められます。
①まず、瓶内の空気を吸って真空にします。残る空気は10%。
②二酸化炭素を注入。
③再度、瓶内の空気を吸って真空にします。これで残る空気は1%。
⑤瓶内の圧とビールが入ってるタンクの圧を同じにします。
 この圧が同じでないと瓶内が泡立って決められた量のビールが注入できません。
⑩瓶内にビールを壁に沿わせながら注入。
⑬規定の量までビールが入るとそれ以上ビールが入らない構造。
⑭瓶内部にかかっている圧を開放し、通常の圧に戻します。

ビールを詰める際は徹底的に酸素(空気)が入らない状況で行われます。
ビールの汚染(雑菌や異物が入る事)が起きる原因の8割はこの瓶詰め工程。
洗浄なども徹底的に行われます。
これが終わればすぐに打栓(栓を閉める)。

こんな工程がどれだけの速度で行われているかというと……

一時間に3万本ほどを詰めていきます。早すぎる…….
そしてこれがラベル貼り。おりゃおりゃおりゃおりゃーーーっっ!!

これが機械できれいに箱詰めされて出荷、物流会社の人に運んでもらってお店に並ぶわけですね。
ビールを作るだけでも様々な人が関わっています。

ドイツのスーパーにて。多くは瓶で売られています。

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
子供たちに大人の飲んでるビールに少しでも興味を持ってほしく、ビールの作り方を書きました。
ビールを作るには、多くの知識が必要です。この知識の基礎となるのは小学校・中学校で習った算数(数学)や化学を応用したものばかり。
私の小学生の時の夢は体操でオリンピックに出る事でしたが、きちんと勉強しておいてよかった。
世の中、どんな知識が必要になるか分からないものです。

みなさんが大人になってお酒が飲めるようになった時、まずはお父さんやお母さんと乾杯してほしい。
彼らは今まで少なくとも何度かはお酒とお付き合いする場面があったでしょう。
お酒の席での失敗などもしているかもしれません。
初めてのお酒は心から信頼できる人と乾杯し、お酒の楽しみ方や怖さ、体調にもよりますがどの程度飲めばどれぐらい酔っぱらうのかを理解することから始めましょう。

一緒に過ごす空間にお酒があると、思わず本音が出たり、自身の考えが整理されたり新しいアイデアが生まれたり。
お酒との付き合い方を信頼できる人から学び、お酒を通してより豊かな楽しい人生を送る事を願っています。
※日本で1%を超えるビールを作ることは法律で禁止されています。このビールの作り方はビール作りを推奨するものではありません。

ではでは、乾杯!!

ドイツのビールマイスター学校卒業パーティーにて