ビールの作り方②

~麦汁ろ過・煮沸・渦巻釜・冷却~

今回は麦汁のろ過と煮沸まで

④麦汁ろ過
麦汁ろ過とは、麦汁の液体部分と非水溶性の固形部分(もみ殻)を分ける工程です。
前回の糖化された麦汁(デンプンを酵素で分解して小さいブドウ糖などにする事)を78℃まで上げて麦汁をサラサラにします。この時点での糖分は16%ほど(100gの砂糖水に16gの砂糖が溶け込んでる状態)で温度が低いと麦汁がドロドロとするのでろ過に時間がかかってしまいます。この麦汁が一番麦汁と呼ばれるものです。
ろ過にかかる時間を短くするために温度を上げてろ過しやすくします。

ある程度、一番麦汁を取り終えると上から同温度のお湯をかけて麦芽に残っているエキスをとります。もったいないですからね。
そして、最終的な麦汁の糖度は11~12%ほど。これはコーラと同じぐらいの甘さです。それを発酵させるとお店で売られているアルコール5%ほどのビールが完成します。

ドイツで働いていた醸造所のろ過釜
実際にろ過を行っているところ。下部から麦汁が出ていき、もみ殻などの固形部分は上部に残ります

このもみ殻などの固形部分は農家に売って家畜の餌にしたり畑の肥料にしたりします。

⑤煮沸
完成した麦汁を約60~90分間、煮沸していきます。そしてこの時にホップを投入。
ビールの苦みはホップ由来の苦みです。煮沸することでホップに含まれるα酸(あるふぁさん)という物質が溶け込んでイソα酸に変化し、苦みがでます。この苦みが防腐剤のような役割をし、雑菌などの汚染から守ってくれる作用もあります。
その他、煮沸する理由は熱による麦汁の殺菌、水分をとばす事で麦汁の糖度を濃くする事、タンパク質の固まりを強くして取り除きやすくする事、不快なにおいの成分(DMS:硫化ジメチル)を蒸発させる事などがあります。

ドイツでの醸造所で働いていた時の煮沸釜。傘のように広げて表面積を大きくし、不快なにおいの成分を蒸発しやすくする仕組み

ホップには大きく分けて2種類のホップがあり、1つは苦みを与えるビターホップ、もう1つは華やかな香りを与えるアロマホップ。
ビターホップは煮沸の最初から入れ、アロマホップは香り成分を残すために煮沸の最後の方に入れたり、これより後の工程で入れられます。
香り成分は揮発(蒸発)しやすいので最後の方に入れた方が香りが残りやすいんですね。
通常のビールでは両方のホップを入れて作られます。
ホップの使用例:ビターホップは60分間煮沸、アロマホップは最後の10分間のみ煮沸
といった具合に入れられます。

これでいよいよ麦汁の完成

⑥渦巻釜(以下、ワールプール)
煮沸後の麦汁はワールプールの側面に沿って流れるように入れられ、渦を巻きます。そうして入れられた麦汁を30分ほど放置すると煮沸中に出来たタンパク質のかたまりやホップの固形部分が中央に集められ、その固形部分以外のきれいな液体部分だけを⑦急速冷却器で冷やしていきます。
麦汁を急速に冷やさないと、せっかく煮沸で蒸発させた不快なにおいが再び発生してしまうのを防ぐため。
この急速冷却器は約1時間で全ての麦汁を10℃ぐらいまで冷やしてくれます。

熱交換式の急速麦汁冷却器。これで1万ℓの麦汁を1時間で冷やしてくれます。

熱交換式冷却器の構造
内部に多くの管が通っており、「冷たい水」と「熱い麦汁」は決して交わらずにそれぞれの管を通り、「冷たい水」が「熱い麦汁」の熱をもらって熱くなり、「熱い麦汁」は「冷たい水」に熱を奪われて冷たくなる構造です。
温められたお水は再び麦汁を作る際などに再利用されます。
せっかく温めた熱も無駄にするのはもったいないですからね。
これで麦汁の完成!あとはいよいよ発酵の工程です。

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ビールの作り方③