わくわくファーム川北様

21年2月、金沢にて行いました。
今回の主テーマは濃色麦芽の製造方法・醸造での高品質化です。
まずは、大麦の分析値から現状を把握し、この大麦をどのように製麦すればより品質の高い麦芽になるかを各分析値を元に詳細のご提案。

次に、使用する大麦の特徴を通常の二条大麦と比較。土地柄、二条大麦の安定生産は難しく六条大麦を使用との事。六条大麦全体にいえる特徴としては①高βグルカン②高ポリフェノール③高タンパク

βグルカンは麦汁の粘性を高める成分。これが高いと麦汁ろ過時により多くの時間を要し、もみ殻と触れる時間が長くなるのでポリフェノール成分の溶出や麦汁の酸化、労働時間の増加、エネルギー負担の増加(麦汁が冷えてしまうので煮沸温度帯への昇温時など)、また、ろ過層で加熱機能が無いと麦汁が冷えてしまうので余計に粘性が上がり時間がかかるといった悪循環に陥ります。ろ過の目安時間は60~90分。
これを出来るだけ減らすため、製麦においての浸水時間や温度、酸素の注入など具体的な方法、発芽工程での温度管理や酸素・二酸化炭素比率、焙燥工程での昇温タイミングやその維持時間などの理想をお伝えし、現状の設備で可能な対処方法を一緒に考えて解決していく策を練りました。
また、βグルカンを低減するためのマッシング方法(βグルカン分解酵素の活性温度帯やpH、それに要する時間など)を持参した酵素活性表を基に説明。

ポリフェノールについて。ポリフェノールは穀皮に多く含まれます。そして、六条大麦は二条大麦と比較して粒が小さいのが特徴。二条大麦と同量でも粒数が多くなってしまい、その分穀皮も多くなってしまいます。この溶出を出来る限り抑える事でビールを飲みやすいすっきりした味わいにする事が可能です。
この溶出を抑えるために必要なことはろ過時間の短縮。その為にはβグルカンの溶出を抑える為の丁寧な製麦・粉砕・マッシングの理想から現状の設備で即日対応可能な解決策を練りました。

タンパク質について。タンパク質の分析標準値と比較。多くても少なくてもよくないのがタンパク質。酵母の栄養に欠かせないFANを含み、また泡持ちやコク・色味・アロマなども与えてくれますが過剰で最後のワールプールで除去が不足すると酵母に張り付いてしまい酵母の活性化減少、発酵の長期化で発酵不良の香りと味を付帯してしまいます。こちらは通常の麦芽でもタンパク質は標準値内でもコルバッハ指数の大小で対応が変わってきます。

次に、濃色モルトの製麦方法について。こちらは私も初めての経験でしたので手探りでした。濃色麦芽に適した大麦は高タンパク質、焙燥前の水分量は通常より多く水分を含ませることでメイラード反応を促すことが重要。作りたい麦芽によって温度とその維持時間を調整、メイラード反応を行っていきます。まずは基本的な濃色麦芽の作り方をご提案し、それを基に他種類の濃色麦芽温度調整などの目安をご紹介しました。

最後に、醸造工程での高品質化について。①醸造工程では各原料の管理方法について、②粉砕方法とその使用方法、③各酵素の働きと活性・不活温度とpH、④麦芽量:水の割合調整、⑤麦芽の分析値からマッシング方法の調整、⑥ろ過時に留意点、⑦煮沸時留意点(タンパク質凝固の為の措置等)、⑧ワールプールの留意点、⑨酵母の添加方法、⑩最大発酵度から逆算する発酵管理方法(澱引きのタイミングや酵母収穫、タンクの冷やし方等)、⑪熱処理前後の品質維持のための対策などを行いました。

私自身も大変勉強になった初依頼のお仕事でした。ご興味ある方はお気軽にお問合せください。ご連絡お待ちしております。