~発酵から熟成まで~
さて、冷やされた麦汁に酵母を投入し、発酵させていきます。
酵母のおさらいですが、酵母とは酵母にとっての栄養を消費して別のものを生み出すものの事です。
例えば、味噌・醤油・納豆・ヨーグルトなどもビールや日本酒・ワインと同じく発酵食品。
まず、ビール酵母を投入する前に大切な作業があります。冷えた麦汁に空気を混ぜて麦汁内に酸素を溶け込ませます。麦汁内に酸素があると酵母の数が増え、発酵が順調に進みます。逆に酸素が少ないと、酵母が増えず、一つ一つの酵母への負担が大きくなり、疲れ切って、好ましくない味や香りで出てしまいます。
⑧酵母投入
空気注入を経てから、いよいよ酵母の投入です。
⑨発酵
酵母を投入するとどんどん発酵が進んでいきますよ。
ビール酵母は糖分を分解してアルコールと二酸化炭素を作ってくれます。大きい連なりのデンプンを酵素の包丁のような作用で細かく切って出来るのがブドウ糖でしたね。ブドウ糖は炭素(C)と水素(H)と酸素(O)から出来ています。それを中学生で習う化学式で表すと以下のようになります。
ブドウ糖(C₆H₁₂O₆)
⇩
アルコール(2C₂H₅OH)
+
二酸化炭素(2CO₂)
+
熱
酵母は、このようにブドウ糖を他の物質に変換し、熱を生み出します。食べ物を食べて熱を生み出す人間と同じですね。
ここで発酵はどのように進むのかを見てみましょう。
酵母が消費する糖の順番は以下です。
1.ブドウ糖(一番小さい1つの糖)
2.麦芽糖(ブドウ糖が2つ連なった糖)
3.マルトトリオース(ブドウ糖が3つ連なった糖)
人間の食事で例えると、1.前菜(サラダ)、2.主食(ステーキ)、3.デザートのような順番でしょうか。
おおよそ、この麦芽糖までが消費される発酵は約7日で終わり。
熟成期間へ移行します。
⑩酵母回収・廃棄
発酵期間が終わると底に溜まっている酵母を取り除きます。
発酵後半になると酵母は疲れて底に沈み、自己分解(自身で自身を分解していくこと)を始めてビールに不快な味を及ぼします。それは熟成期間には必要ないのでその酵母を取り除きます。
⑪熟成・貯蔵期間
発酵前の糖を100%として、発酵後に糖が何%残っているかを最初に求めておき、発酵可能な糖の多さがどれぐらい残っているかを見極めて熟成期間に移行します。(少量の麦汁に大量の酵母を入れ、最大発酵値を求めておきます)
この発酵➡熟成期間への移行は約7日後ぐらいに移行します。
この熟成期間で最も大切な工程はこの2つ!!
1.不快な成分(ジアセチルなど)を極力少なくする事!
2.炭酸(二酸化炭素)をビールに溶け込ませる事!
1の不快な成分の分解は酵母が徐々にやってくれるので酵母にお任せ。
2の炭酸を液体に溶け込ませるには2つ、条件があります。
Ⅰ. 温度を低くする事
Ⅱ. 圧をかけること(密閉して空気が逃げないようにする事)
学校で習う、ミョウバンや砂糖を多く溶け込ませるには温度は高くした方が溶けやすいですが、二酸化炭素は逆です。温度が低くないと溶け込んでくれません。
なので、熟成期間への移行と同時に温度を低くして栓をし、圧をかけていきます。
圧をかける=通常、1ℓのペットボトルには1ℓ分の空気しか入りませんが、それを空気が漏れないようにしっかりと栓をすることで2ℓの空気を入れられるようにする事です。
だから炭酸飲料のペットボトルはパンパンなんですね。中に多くの空気(二酸化炭素)が入っている為、外に出ようとしています。
ちなみに、二酸化炭素が水に溶け込んでいる状態から栓を開けた際の化学式はこちらです。
H₂CO₃(炭酸水)
⇩栓を開けると….⇩
H₂O(水)+ CO₂(二酸化炭素)
炭酸水は炭素(C)、酸素(O)、水素(H)から成り立っています。
このように、ビールにしっかり炭酸が溶け込み、不快な成分(ジアセチルなど)が少なくなればビールは完成!
それでは最終工程、缶や樽、瓶詰めへの工程へ行きましょう!
では、最後にフィルターから瓶詰めまでの工程です!
ビールの作り方④